ゲロピッピボブは23年で最大のチャンス
京都の市街を走っているとき、異変を感じた。
一言もしゃべらず、弱り切っている助手席のボブを見て、俺は思った。
「もしかして、今がチャンスなんじゃないのか」と。
間違いない、俺にとっては23年間で最大のチャンスだった。
ボブが弱りに弱っていたのだ。
そう、自爆、酒を飲みすぎたのだ。
「レモンサワーおかわり!」
「レモンサワーおかわり!」×5~
くっそうまいわと言いながら、かつてないペースでレモンサワーを胃にぶちこんでいた。
とっくに限界を超えていたのに。
*
俺とボブは小学生1年生からの付き合いだ。
しかし俺は常に、どうもポジションがまずかった。
少年野球でもそうだ。俺がカマチョやローリーといった圧倒的カースト社会での立ち回りに苦戦してピーピー泣きじゃくっている横で、ボブはさらりと絶好のポジションを確保した。
高校時代は言わずもがなだろう。学校中を揺るがせたパチパチパンチで最も叱られたのは俺だが、糸を引いていたのはボブだ。
社会人4年目あたり、転職からは顕著な差が表れた。
ガチキチ企業から脱出し、きついとはいえ結果を認めてくれる外資系で輝き、妻と2子がいるボブ。
かたや5社を渡り歩き、そのたびに自分を安売りして年収を最底辺にまで下げ切ったケッピー。
ここにはとてつもない大きな差があった。
しかし、そんなボブが弱りに弱っていたのだ。
*
きゃぷてん不在。これが全てだろう。
大学時代のテニス部で鍛え上げられたまさはるとあくま。
そんなに酒が強くないボブときゃぷてん。
この4人は絶妙なバランスで保たれていた。
酒を飲むペースはこの4人がそろって初めて正常値を出せていたのだ。
きゃぷてんの不在は、ボブに勘違いを起こさせた。
「俺は飲めるんじゃないか」と。
*
俺は23年間、人生という名のマウント合戦でボブに勝ったためしがない。
今やコールド負け状態だ。
そんな俺の真意を見抜く男がいた。
天下の大泥棒、五右衛門ことまさはるだ。
彼は今日、乗りに乗っていた。横ちゃんはいける。ケッピーからキーケースは盗める。かっこいい服は揃う。役満デーだ。
五右衛門は言った。「ボブ、吐くなら車内で吐けよ」と。
俺は言った。「車内はやめろよ!」
いや、本当にそうなのか。
車のゲロは確かに嫌だ。俺の車が汚れる。
金さえ払えば元通りに解決するだろう。
最悪、売ってしまえばいい。
むしろボブに対して俺は初めてマウントを取れる機会がやってくるのだ。
そして俺には直感があった。
「これを逃すともう二度とこないだろう、こんなチャンスは」と。
*
車内は動物園状態だった。
吐き気をもよおし、「助手席を汚していいか?」と尋ねるボブ。
後部座席で叫ぶまさはる。
後輩のあくまでさえかなり酔っている。
唯一素面の俺は、この混とん状態に理不尽を覚えていた。
「ケッピーは生真面目やから社会では損をする」
ボブやまさはるが飲み会で俺に言った言葉が残る。
そのとき、ボブがボソッと呟いた。
「ちょ、車止めてくれ」
京都南インターを前にして、彼はもはや臨界点を迎えていたのだ。
さあ、どうする、俺は考える間もなく、車を止めていた。
*
なお、その後、ボブはもう一度SOSを出した。
そのため、吹田SAで休憩をとった。
*
尼崎付近まで帰ってきたとき、ボブは顔色がだいぶよくなっていた。
「ケッピーよかったなあ!
お前は二度の危機を免れたぞ。
一回目は京都市内、二回目は吹田SA間近。
よかったなあ~」
彼はまるで他人事のように言った。俺は疲れ切っていた。
その後、俺たちは解散した。
*
翌朝、ボブからLINEがあった。
「なあ、車の中に、アイコス落ちてない?」
俺は必至に探したが見当たらない。
「ないぞ」
するとボブから返信があった。
「まさはるが持って帰ってたわ」
いつもそうだ。
生真面目さがゆえに、いつもカリカリしている気がする。
その後、グループLINEにボブが昨日の小旅行をまとめるメッセージを送っていた。
「お疲れ様でした。昨日はみんなあと一歩で嘔吐するところでしたね。
僕は帰宅途中から意識は朦朧としており、家に帰ってからも記憶はなく今やっと起きました。めずらしく風呂も歯磨きもせずにこの時間です。
LINEを振り返るとやっぱりケッピーが怒ってますね。
確かにケッピーの真面目な性格上、あらゆる世の中の不条理、一個一個が気になってしまうのも分かります。
でももう少し気楽にいきましょう。
今日みたいに俺なんて無理やと塞ぎ込んで、ひねくれるのは損です。これからは宅建もあるし、自分次第でなんとでもなる事に早く気づいて欲しいです。意外と今のケッピーも悪くないと。
最後に、行きたい人が現れたら、私服の「対策」しっかりしようね!既に昔買った服があるからいいねんとかではないですよ。
あくま君
うま飯係お疲れ様でした。卒なく任務をこなす君に感謝です。
今回選択した飯屋も「旨すぎて草」この一言に集約されます。
だけどおかしいなぁ。たらふく食べたはずなのに胃の中がからっぽだ。
次回もよろしく!
まさはる
横ちゃんのアポ取り、キーケース購入時の色のすり替え見事でした。特にキーケースの時は何をするのかとケッピーとのやりとり一部始終を見てましたが本当にまさかでした。
これぞ天下の大泥棒ですね。
今回「横ちゃん」という明確な目標ができ「対策」をしている君の姿、とても逞しく見えました。また面白い話を聞かせてください。
これから各々師走の気ぜわしい日々が続くと思いますが、頑張って参りましょう👍
今年もお疲れ様でした。
PS.きゃぷてん君早く元気になってね」
今回の小旅行も、無事楽しく終了した。
アラサーになり、みんなで集まる機会は減ってきたが、相変わらず俺たちはいつも通りだ。
きゃぷてんが来れなかったのは残念だったが、きゃぷてんがいないことで、きゃぷてんの存在の大きさを感じることができた。
そしてきゃぷてんが担っていた常識人というセーブ役がいないことで、俺はいつも以上にカリカリしていた。
自由気ままにふるまうまさはるやボブにカリカリチョウチョさんになっていたのだ。
俺は思っている以上に生真面目なのだろう。
ポケモンでいうならキマナッツだ。
ではこれからどうするのか。
答えは簡単だ。
「バグ-悪-を極めていこう」と思う。
吹っ切って悪の道に進む、そして俺自身が「制御不能の悪の異分子」を目指したい。
それこそ俺が人生で最も輝いていた高校2年生の頃の感覚を取り戻し、覚醒するためのきっかけなんだろう。
「あいつ、バグってるぞ」
そんな唯一無二を目指したい。
最後まで読んでくれて、皆さんありがとう。
ほんじゃ、次回もおぶあかした。
【貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!】
疲れた金曜の夜に、ふっと笑えるコメディを。
「バカげている事ってめちゃめちゃ楽しいですよ!人生って結構面白いですよ!」
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当ブログ「俺たちバグジー親衛隊」は、私自身の実体験を元にした小説を投稿しています。
大人になると、腹を抱えて笑ったり、ワクワクしたり、冒険することがめっきり減ってしまったりしませんか?そんなあなたに、いや、私自身に届ける物語が、「俺たちバグジー親衛隊」です。
今こそ”おバカな青春”を思い出そう!!そう思い、私は”俺バグ”を再び書き始めることにしました。
「学歴、年収、結果、出世、結婚…」 常識や世間体、既定路線の資本主義競争、そんな結果を忘れて、ただ、今この瞬間を楽しむ。それが俺たちバグジー親衛隊に登場する人物たちです。
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