横ちゃん大作戦
今回は京都でのサイクリングだ。自転車をレンタルして、京都一円を巡る。
まずは手始めに昼食だ。
12時15分。その時歴史は動いた。
うま飯隊長に任命されているあくまが選んだBASE358。夜はBAR、ランチもうまそうというオシャレな店だ。
いつも通り、いつ検索したのかも悟られるまま、名店を見つけてくる、それがエリートあくまだ。
うま飯隊長という役職は本当に難しい。
うま飯を探すという単純な役だが、探した店がいまいちであろうものならボロカスに責められる。前任者のギアルはうま飯隊長の責務が嫌すぎて俺たちのグループから抜けたと言っても過言ではない。
しかしあくまは圧倒的な実力でそつなくうま飯を探してくるのだ。
*
そんなあくまはランチの待ち時間に、導火線に火を灯した。名MFとして軽くパスを出す感覚だろう。
「弟経由で聞いたんすけど、姉の横井さん空いてますよ」
そのあくまの呟きを聞いたまさはるは、横井がおったか!とその存在を思い出す。
姉の横井さん空いてます。
この言葉を聞いて意味が分かった方はかなり飢えている。
補足させていただくと、この会話の文脈は、彼女が欲しいけど誰かよさそうな人がいるか、ということだ。
アラサーにもなると彼女がいるかどうかは重要度が増してくる。
既婚者のボブと、パートナーがいるきゃぷてんを除いたメンバーは常に彼女を募集しているのだ。
姉の横井さん空いてます。
このあくまの言葉は、まさはるのシナプスを刺激した。
まさはるの中で、横井は仲が良い友達であって恋愛対象としては浮かび上がっていなかったのだ。しかしここでぐぐぐと恋愛対象に浮かび上がる。
「ちょっとやりとりみせてみろ」名監督ボブは、まさはるのスマホをみて、横ちゃんとのやりとりを確認する。
………
「はい、結婚です」ボブ名監督はそう判断した。
結婚してると見間違うほど親密なラインをしていたのだ。
やりとりは5年ほど前とはいえ、その密度はレベチだった。そう、ガチでいけるのだ。
ガチイケ確定。
「早くいけよ」ボブ名監督はいつも通り急かした。
ボブにとって、いけるかいけないかはどうでもいい。
ただ彼が求めていることは早さだ。速攻やってみて、即効結果がわかる、これが大事だ。
その餌食になってきたのが、俺。そう、ケッピーだ。速攻女の子に連絡をとっては、撃沈する。
今回はまさはるがその役目を担うのかもしれない。
わかった。と、横ちゃんに連絡するまさはる。
このあたりの嗅覚は名ストライカーの嗅覚を感じさせる。
「久しぶりー!」
「久しぶり!」
カップラーメンの出来上がりより早く返信してくる横ちゃん。もはやまさはるからの連絡を待っていたかのようだ。
「え?尼崎にすんでるん!?」
「俺も!私も!」
タンタンタタタン、ニシタンクリニックだ。
サクサクと進むレスバトル。
レスバトルが盛り上がりすぎて、まさはるは海老フライランチの食事が追いつかない。
「くう、飯を食う暇がねえ」
ボブ名監督はここで、パスを命じた。
「エビフライはケッピーにあげとけ」
「おう」
即座にケッピーに海老フライが回ってくる。
ハチミツを前にしたプーさんのようにかじりつくケッピー。
名監督は残酷な真実を告げる。
「これはあれやぞ。一軍の主力選手が忙しいが故にベンチの選手に雑用させるやつやから」
*
ケッピーが海老フライを平らげた時、既にコトは仕上がっていた。
そう、アポ獲得だ。
まさはるは20分ちょっとの時間で、横ちゃんとの飯の約束を決めたのだ。
男の背中には自信が満ち溢れていた。
「名ストライカーを育てて俺も嬉しいわ」ボブ名監督も鼻が高くなっている。
「かたやケッピーは…」
そう、ケッピーは肩を落としていた。
よっちー経由で東浜の連絡先を聞いていたものの、お話にならないくらい厳しい現状だったのだ。
ゴール際に近づくこともできず、センターラインからシュートを打たざるを得ない。
そんなケッピーに名監督は励ました。
「まだいけるかもしれんぞ」
これは名監督なりのケアだ。
2軍3軍の選手にもフォローをする必要があるのだから。
横ちゃんシフト用の服を探せ
まさはるの横ちゃんへの想いはガチだった。
「いけたらラッキー」彼にはそんな言葉はなかった。
「まさはる、横ちゃんとクリスマスは横ちゃんとそのままベッドインやな」
そんなケッピーのセリフに、皆はドン引きしていた。
「ケモノかよ」ケッピーが汎用ヒト型決戦兵器と言われるゆえんだ。
*
「なあ、まさはる。お前その服で横ちゃん戦に挑むつもりか?」
名監督ボブは懸念を口にした。
「いや、服を買い直そう」
ストライカーとして覚醒しかけていたまさはるは承諾する。
ここでも大活躍するのはあくまだ。
昼夜のうま飯調べだけではなく、小物ショップの紹介から、服屋さんまで。
そのアテンド力は会うたびに磨きがかかっている。
しかしそのあくまの協力をこぎつけたのは、なにより横ちゃんを狙うまさはるの本気さだろう。
「まさはるさんがこんなにガチになるなんて初めて見ました。協力します」
ケッピーは穴があったら入りたくなった。
ワンチャン可愛い系の服を狙え
まさはるはガチだった。
かばん屋さんで17万のコートに袖を通してみたり、
店員のお姉さんに「横ちゃんへの思い」を語ってみたり。
これがいわゆる一人の男が対策する時の姿だ。
3店目だろうか。ここがハマった。
「これもどうですかー」
「これもどうですかー」
ノリに乗るまさはると、販売チャンスだぜっと張り切る店員のお姉さん。
あれよあれよと言うまに服が決まる。
「もうどうせなら上から下まで全部そろえとけ」
名監督ボブは背中を押した。
ボブのシステムは3-4-3のバランス型だ。
どれだけひとつカッコイイ装備品があっても、全てがカッコよくないと意味がない。
全て揃えろ、と。
とにかく驚いているのはあくまだ。
「まさはるさんがこんなに積極的に動いている」と焦っているのだ。
いつのまにかあくまも店員さんのようにになっていた。まさはるのそばに立ち、試着をサポートする。
2時間ほどかけて、まさはるは全ての装備を揃えた。
アウター、インナー、ズボン、カバン。総額3万くらいだろうか。
その男の背中は輝いていた。
【貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!】
疲れた金曜の夜に、ふっと笑えるコメディを。
「バカげている事ってめちゃめちゃ楽しいですよ!人生って結構面白いですよ!」
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当ブログ「俺たちバグジー親衛隊」は、私自身の実体験を元にした小説を投稿しています。
大人になると、腹を抱えて笑ったり、ワクワクしたり、冒険することがめっきり減ってしまったりしませんか?そんなあなたに、いや、私自身に届ける物語が、「俺たちバグジー親衛隊」です。
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