その日の部活が終わったあと、俺たちバグジー親衛隊の3人とギアルは自動販売機の前に集まっていました。
そこでぼくはボブに尋ねます。
「なあ、ボブ。今日の昼のことなんやけどよ。これから俺の元に起こる恐ろしいことっていうのは何なん?」
するとボブは、頬を緩ませました。
「覚悟はできたんか?」
「覚悟?」
「ああ、今後襲う恐怖を受け入れる覚悟や」
「あ、ああ」ぼくはゴクリ飲み込みました。
「まずは、あのおっさんが学校に通報する。
部活動で一般市民にご迷惑をかけて激怒させてしまった、これは学校としては大問題や。
そんな問題を起こしたテニス部には何らかの処分が必要や」
「処分…」
「まあ大概の場合は大会出場の見送りやな。つまり夏に控える高校総体に我がテニス部は出ない。
そうなるとどうなるかわかる?」
「最後の大会となる3年生にとっては、とても悲しいことや…」
「それもあるけど、もっと重要なことがある。
それは、高原さんが勉強に集中できんくなることや」
「そっちか!?」ぼくは声をあげました。ボブの話をいっしょに聞いていたきゃぷてんとギアルもぷっぷぷと吹き出します。
「ああ。まあぶっちゃけ高原さん以外の3年生は今はおいておこう。
問題は今回の事件を起こしたとっしーを管理する責任者やった先輩、高原さんのメンタルが重要や」
「俺が勝手にやらかしたとはいえ、高原さん的には自分に責任を感じるやろな」
「そうやで。そして、高原さんは大会に出れんくなったのは、自分のせいやと思うわけや。
そして、それがボディブローのようにずっしりと肩にのしかかった結果…
受験失敗…高原さんは目標である神戸大学に落ちる」
「ヒエッ!!」とぼくは叫びました。
「あの人は滑り止めのために私学を受けるとかはせんからな。それはこの前言ってた。
だから浪人生が1人、生まれる訳や。
お前がやらかしたデカい顔すんなよ事件は1人の人間を浪人させるほどのインパクトがある!」
ぼくはボブの言葉をきいて小刻みに震えていましたが、どうにもボブの話が極論に聞こえます。
「待ってくれ。総体出れんことと、神大落ちること何の関連がある?!話が飛躍しすぎじゃないか?」
「アホかっ!全て繋がってるんや!文武両道のうちの学校にとって総体は超重要なイベントや!
それに出れないことで、3年生の怒りはやらかしたとっしーと、ちゃんと1年生を統率してなかった高原さんに向くんや!」
「そ、そうか、まずいなあ」
ボブの話を聞いてぼくは不安になってきています。
きゃぷてんとギアルは笑いを堪えながら聞いています。
そのとき、ボブはニンマリと詐欺師の顔になりつつありましたが、その勢いのままさらにぼくを追い詰めます。泣きっ面に蜜蜂とはこのことです。

「高原さんが神大に落ちて終わりちゃうぞ?こっからが本番や」
「まだなんかあるんか…?」
「高原さんは浪人生になってから、’なぜ俺は受験に失敗したのか’と振り返るはずや。そこで思い出す。今日の事件を。
あの事件を発端にして人生の歯車が狂ったことに気づいた高原さんは、どうすると思う?」
「倍返し??」
「そう、復讐を考える訳や。復讐というか、これはとっしーが全部悪いから、ごもっともなお怒りやな」
「どどどど、どんな復讐されるんや?」ぼくは恐怖を感じながらボブに尋ねます。
ここでボブは、さらっと言い放ちました。
「毎晩、家に来る」
「か、か、家庭訪問!?」ぼくは想定外の倍返しに驚きました。
「そんな甘っちょろいもんやない。
晩といっても深夜やで。3時とかやな。
そして、この時間に”ドンドンドンッッッ”と、思いっきりドアを連打して、高原さんは叫ぶんや。
‘俺が受験に落ちたのはお前のせいやー!”ドンドンドン!オラ武田ァ!!’」
「ヒエッ!!ドアの音も怖いな…」
「このドンドンはドアの音じゃないぞ。自分で’ドンドン’って叫んでもてるからな。
それほどの怒りや。そして、この復讐が毎晩続く。
高原さんの叫びで飛び起きたとっしーは、布団の中にくるまって、ブルブルブルブル震えながら過ごすんやろうなあ」
「怖い、怖すぎるぞ。それなら殴られたりする方がまだましやあ…」
オカンや親父も震えるしかないわ。家族全員を震えさせるほどのインパクトを高原さんは毎晩与えてくる。」
「っうっうわぁっっー、怖すぎる!!」ぼくは膝から崩れ落ちて発狂しました。
そんなぼくをボブは「どんまい」と言って真顔で見つめます。きゃぷてんとギアルはもはや笑いをこらえきれず、腹を抱えています。
冷静に考えるとボブの話にはツッコミどころが満載です。
・そもそもほぼ確実に総体には出場できる。総体に出れないほどの事案ではない
・総体に出れなかったとしても、それで勉強できなくなる高原さんはヘボすぎ
・万が一総体に出れず、高原さんが受験に失敗したとしても、家に来てドアは叩かない
しかし、ボブの詰めに追い詰められたぼくにはそんなことを指摘する余裕はありませんでした。
膝から崩れ落ちるいつものリアクションをしているのです。
そんな中、自動販売機の前でたむろするぼくらの元に、当の本人高原さんが姿を現しました。
どうやら話を聞いていたようで、蒼ざめた表情でぼくを睨みつけています。
そして聞き取れる限界の小さな声でボソリと呟いたのです。
「デカい顔、すんなよ…」
後日談。高原さんはその後、本当に浪人することになりますが、ぼくの家をドンドンすることはありませんでした。高原さんはチャップリンの名言を知り、前向きさを取り戻したようです。
「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」
【貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!】
疲れた金曜の夜に、ふっと笑えるコメディを。
「バカげている事ってめちゃめちゃ楽しいですよ!人生って結構面白いですよ!」
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当ブログ「俺たちバグジー親衛隊」は、私自身の実体験を元にした小説を投稿しています。
大人になると、腹を抱えて笑ったり、ワクワクしたり、冒険することがめっきり減ってしまったりしませんか?そんなあなたに、いや、私自身に届ける物語が、「俺たちバグジー親衛隊」です。
今こそ”おバカな青春”を思い出そう!!そう思い、私は”俺バグ”を再び書き始めることにしました。
「学歴、年収、結果、出世、結婚…」 常識や世間体、既定路線の資本主義競争、そんな結果を忘れて、ただ、今この瞬間を楽しむ。それが俺たちバグジー親衛隊に登場する人物たちです。
おバカなことでも全力で生きているとなぜか楽しくなる。そんな魂を届けます。
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