「適当に打ったらいけたとかどうせバレるやろ?
俺が教えたって知られたくないから、教えるのは無理や」
織田はそう言って、ぼくに浅倉さんのアドレスを渡してくれませんでした。
舌をペロッと出して、「さあてどうしてやろうかなっ」と天を仰いだぼくは、「面と向かって話したほうがかっこちょええ!平常心、さりげなく話しかけてアドレスを直接聞こう」と、勇気で解決することを試みることにします。
次の日の学校にて、休み時間になったときに、一度廊下に出て深呼吸をします。
手のひらに浅倉さんと何度も書いて飲み込みます。そして、クラスの中に入り、友達と会話している最中の浅倉さんに話しかけました。
「なあ、浅倉さん。この前は、ほんまにごめんな。」
「えっと、君は、武田君やんね?」高校1年生の新学期が始まってまだ間もないこともあり、浅倉さんはぼくの名前を確実に認知していないようでした。
「うん、武田トシって言います。この前は浅倉さんの席に雑巾を絞ってごめんな」世界で様々な謝罪が行われているとはいえ、この案件での謝罪は世界初かもしれません。
「大丈夫だよ」と、彼女は可愛らしい笑顔と声で答えてくれます。
その笑顔に舞い上がって頭が真っ白になったぼくは突拍子のないことを口にしてしまいます。
「あ、あのさ!!謝りたいからメールアドレス教えてよ!」
「え??」浅倉さんは目を少し見開きました。
そら、そうです。たった今、謝っている男が「謝りたいからアドレス教えて!」と言っているのです。
本物のアホなのか。ただ、アドレスを聞きたいだけの男なのか?それとも何か別の異星人、関わらない方がいい系の人なのか?
苦笑いを浮かべている浅倉さんでしたが、「いいよ」とあっさり了承してくれました。
「え?ほんまに??」あまりのことになぜか質問をなげかけます。
「うん、ほんま」うなずく浅倉さん。
「じゃ、じゃあ…!」携帯を取り出して、赤外線通信を行い、無事にメールアドレス交換が完了しました。
ぼくは心の中で、よっしゃあっ!いっけたあ!これで彼氏彼女関係やっ!と叫びました。
そして、「ありがとう!またメールするわ!」と、クラス中に響き渡るほどの大きな声で告げました。
「わ、わかった」浅倉さんは、内心メールをしてほしくなさそうな顔でそう答えていましたが、舞い上がってるぼくはそんなことは気付きません。
ぼくはこの日、上機嫌で学校生活を過ごしました。
“私は最強!”なのではないか、頭が冴え渡り、無敵感が漂っています。授業でも解けない問題はなく、部活でも動きのキレが違いました。これが恋の力か…!
*
部活が終わり、いつものように地元に戻ったぼくたちはバグり島で雑談をしていました。ここでぼくはボブときゃぷてんにアドレスを聞いた一部始終を話します。
「え?謝りたいからアドレス教えてって言ったん?」
「せやな。ちょっとミスったけど、まあアドレスはゲットできたからおーるおっけーや!」と言って、浅倉さんのアドレスを二人に見せつけます。
「そのアドレスの聞き方は狂ってるなあ。俺たちが正常な感覚ではできんことをとっしーは平気でやってのけるな」
「それほどでもないぞ!へっへ!」
「褒めてないぞ?」ときゃぷてんは呆れています。
「それで、今の距離感はどれくらいなん?」とボブは尋ねます。
「彼女は谷町に住んでるから、俺の家からは3駅分かな」
「ちゃうちゃう。仲の良さや。」
「ああ、そっちか。全く仲良くないで!話しかけたのは今日が初めて!入学式で浅倉さんを見た日からお近づきになりたいから話しかけようとしてんけどなあ。俺は奥手やから機を伺えず…」
そんなぼくに対して、ボブは自信を持って語ります。
「大丈夫や。とりあえず今からメール送って、その勢いで告ろ。」
「え?!アドレスを聞いた今日、もう告るんか!?」
「もちろん、こんなもんは早けりゃ早いほどええんや!」ボブは薄ら笑いを浮かべてそう言いました。
「アドレス聞いた当日に告白しろ」というボブの極端な意見にきゃぷてんも賛同します。
「気持ちは早めに伝えた方がええやろ。いけるかいけんかは別にしてな」
さらにボブは「どうせ無理やねんから、だから早めに告って断られたほうがダメージが少ないからええぞ?」と付け足します。
「ちょっと待てよ!無理な前提はおかしいやろ!」と突っ込みます。
さらに彼らの意見に反論します。
「いけるかいけんかは別にして、今日告るのは早すぎん?普通、メールしたり話したり2人の距離を縮めてさ…」
「アホか。遅れれば遅れるほど成功確率が下がるぞ?だから速さが大事や」
「ほんまに?」
「俺たちが嘘を言ったことがあるか?」とボブは自身たっぷりに言いますが、ぼくの記憶では彼らは基本的に大半が嘘ばかりです。
「とにかくはよせえよ!善は急げって言うやろ?」
「でもなあ、まだ早いような…」と言って渋るぼくにきゃぷてんは言いました。
「うかうかしてたら他の男にとられてまうぞ?浅倉さんが可愛いなら、なおさら急がないとな。もはや速さの勝負みたいなもんや」
「一理あるけどさ、さすがに今日は早いやろ?もうちょい待ってくれ」とぼくは彼らに頼み込むように言いました。
ボブは「俺らは気が短いからなあ。早くしてくれよ?まあ、夏あたりには行ってほしいな」と言います。
ぼくも「せやな、夏までになんとか仲良くなって告白するわ」と言いました。
こうして、夏までには告ろうということで話はまとまりました。
この時、ぼくはボブの真意に気づいていなかったのです。彼はぼくが告白が成功するか失敗するかよりも、告白をするというイベント自体を面白がっていることに…
それがあの悲劇を生むことになるとは、このときはまだわかっていませんでした。
【貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!】
疲れた金曜の夜に、ふっと笑えるコメディを。
「バカげている事ってめちゃめちゃ楽しいですよ!人生って結構面白いですよ!」
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当ブログ「俺たちバグジー親衛隊」は、私自身の実体験を元にした小説を投稿しています。
大人になると、腹を抱えて笑ったり、ワクワクしたり、冒険することがめっきり減ってしまったりしませんか?そんなあなたに、いや、私自身に届ける物語が、「俺たちバグジー親衛隊」です。
今こそ”おバカな青春”を思い出そう!!そう思い、私は”俺バグ”を再び書き始めることにしました。
「学歴、年収、結果、出世、結婚…」 常識や世間体、既定路線の資本主義競争、そんな結果を忘れて、ただ、今この瞬間を楽しむ。それが俺たちバグジー親衛隊に登場する人物たちです。
おバカなことでも全力で生きているとなぜか楽しくなる。そんな魂を届けます。
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④エンドビギニング 筆者が2020年にAmazonで発売した電子書籍
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