「聞いてくれよ。俺のクラスにさ浅倉さんっちゅう女の子がおってよ」
部活の帰路、ぼくはきゃぷてん、ボブ、織田の三人に話し始めました。
「女の子ってなんやねん。」
「女子って言えよ」
「高校生が真顔で’女の子’っつってたら変態予備軍やぞ?」
厳しい返答を投げかける3人。
「…おうよ。浅倉さんって’女子’がおるねん。入学式の日にその子を初めて見た時の衝撃が忘れられなくてさ…」
「どんな子なんよ?」
「茶髪に髪を染めてんのや!入学式から」
「それはヤンキーやがな。とっしーみたいなイモ小僧には近寄りがたいタイプや」
「そう思うやろ!?俺も茶髪やから大層恐ろしーお顔をしてはるんかなと思ったんや。それがな?フツーにかわえぇんや…」
可愛い女の子を発見したことを恥ずかしそうに語るぼくに対して、3人は心底どうでもよさそうな顔で聞いています。
「俺は自分のクラスでは出身中学校が一緒の下川とよく接してるんやけどさ。ある日事件が起こったんや。
掃除の時間に下川はニヤニヤとしながら、濡れた雑巾を俺の机の上で絞ったんよ。すると、ボタボタッと汚い水が俺の机に垂れる…
‘なっにしてんねん!バッカヤロウ!’と叫んで、俺は怒った!
下川は俺のリアクションを見て’ギャハハギャバッア’と、北斗の拳の雑魚キャラみたいに笑いながら走り去って去っていったんや。
‘このまま終わるわけにはいかん。やられたらやり返す。10倍返しだ!’
俺はそう叫んでよ。濡れ雑巾を準備して、下川の机の上に絞ってやったんや!
すると俺の様子をみて、ある子が話しかけてきたんや。
‘武田くん何してるの?そこは下川君の席やなくて、隣の浅倉さんの席やで…’
‘ああぁああ!!やっちまった~!’
俺の叫び声がクラスに響きわたったんよ。
そう、俺は取り返しのつかないことをしてしまった…濡れ雑巾を何の罪もない浅倉さんの机で絞ったんや。
俺は申し訳なさで頭が真っ白になったよ。そしてポケットからハンカチをとりだして机を拭きまくった。
騒ぎをかけつけたんかな。ほどなく、浅倉さんがやってきた。
俺は彼女の顔を見るなり、大声で謝ったんや。
‘ほんまごめん!’と。
浅倉さんは、水浸しになった自分の机と、俺の大声に戸惑いながらもこう答えたんや…
‘大丈夫だよ!’
大丈夫なはずがないのに、浅倉さんは俺に気を遣って大丈夫って言ってくれたんよ!!
これが雑巾事件の一部始終や…!」
「くっそおもんない話やな」と織田が眉間にしわを寄せると、きゃぷてんも「面白さは期待してなかったけどその通りやな」と続けます。
するとここで、ボブは言いました。
「お前さ、その子のこと好きなんやろ?」
鋭い指摘にぼくの目は宙を仰ぎます。
「え、え?そんなことあるかいな…」
「嘘つくな!態度でわかる。お前とは小1からの付き合いやからな」とボブは追求します。
たじろぐぼくの様子を察したきゃぷてんはこう切り出します。
「俺らに任せろよ?恋愛成就のいいアドバイスしたる!」
「お、お前ら恋愛経験があるんか?」と不安になりました。
しかし彼女ができたことがなかったぼくはどうすればいいのかもわからなかったので藁をも掴む思いで彼らを頼りにすることにします。
「とりあえずさ、アドレスを聞こうや」とボブは言います。
「いや無理や。恥ずかしい」とぼくは即答します。
そうです。ぼくは女子に面と向かってアドレスが聞けないほどのシャイなやつでした。
「じゃあ、友達経由でアドレス聞こう」ときゃぷてんが名案を出したあと、織田が口を開きます。
「俺さ、浅倉と塾一緒やからさ。あいつのアドレス知ってるぞ」
ぼくは大声で、「頼む!織田ぁ、彼女のアドレスを教えてくれえ!!」と訴えますが、織田は即答しました。
「イヤ!!!」
「なんでやねん!?」
「お前と知り合いなことを知られたくない」
ボブは冷静に織田の気持ちを紐解きます。
「とっしー、あきらめろ。
織田ととっしーは同じ中学校やけど、お前らは学校内のクラスヒエラルキーでは天と地のさや。イケイケヤンキーキャラの織田からすれば、髪の毛ゲジゲジでださいとっしーとつるんでいることがバレてほしくないわけやな」
ひょえぃ。ぼくは真顔でショックを受けました。
「てか周りの友達に聞けよ」ここできゃぷてんは別の案を出します。
「それはなんか恥ずいんよ。狙ってる感が満載やん」とぼくは言い訳をします。
「なら直接話してる最中の流れで聞けよ」
「そんなんもっと無理やろー。話しかけるのさえはずいのに…」
何かしらと理由をつけてアドレスを聞く勇気を振り絞れないぼくに、きゃぷてんは痺れを切らしました。
「わかったわかった!なら、こうしよう!まず、織田からアドレスは聞く。ただ、織田から聞いたことは言わない」
「…!?なら誰から聞いたことにするねん?」
「誰からも聞いてないことにする。」
「は?そんなんおかしいやん?’誰からアドレス教えてもらったん?’って聞かれたらどうするねん?」
「そういうときは、自信持ってこう答えろ!」
「なんて?」
「適当に打ったら、メールが届きました!」
「は?適当に打つって、アルファベットと数字の組み合わせが何通りあると思ってるねん?」ぼくは、きゃぷてんの無茶な意見に突っ込みます。
「大丈夫や!とっしーから突然、浅倉さんはこう思うやろう。
‘アルファベットと数字の組み合わせは膨大な数あるのに、武田君は何度も何度も試してくれたんだ。いい人。好きになっちゃいそう!」
「めっちゃいい!それや!!」ボブはきゃぷてんの意見に賛同します。
「ええやん!」織田も自分の名前が出ないので安堵してます。
「いや、適当に打っていけるってなんか無茶なような…」と渋るぼくにきゃぷてんは強く念を押します。
「大丈夫やって。自身をもて!そして、このスタンスは絶対貫けよ?!
適当に!打ったら!!届きました!!!」
【貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!】
疲れた金曜の夜に、ふっと笑えるコメディを。
「バカげている事ってめちゃめちゃ楽しいですよ!人生って結構面白いですよ!」
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当ブログ「俺たちバグジー親衛隊」は、私自身の実体験を元にした小説を投稿しています。
大人になると、腹を抱えて笑ったり、ワクワクしたり、冒険することがめっきり減ってしまったりしませんか?そんなあなたに、いや、私自身に届ける物語が、「俺たちバグジー親衛隊」です。
今こそ”おバカな青春”を思い出そう!!そう思い、私は”俺バグ”を再び書き始めることにしました。
「学歴、年収、結果、出世、結婚…」 常識や世間体、既定路線の資本主義競争、そんな結果を忘れて、ただ、今この瞬間を楽しむ。それが俺たちバグジー親衛隊に登場する人物たちです。
おバカなことでも全力で生きているとなぜか楽しくなる。そんな魂を届けます。
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