14話 ママチャリを電車に乗せることはできますか? / 俺たちバグジー親衛隊 Ⅱ章

 

授業と部活が終わり、ぼくらは帰路につきました。

きゃぷてん、ボブ、織田とは違うクラスなので、彼らはぼくが自転車、といってもただのママチャリで学校に来たことを知りません。

「今日自転車やから一緒に帰れんわ」とふらっと告げてみると…

「は?何考えてるん?」

「バレたら生徒指導の対象やん」

ボブときゃぷてんは驚いています。

「バレんかったらええねんって」

「てか、自転車どこにとめたん?」

「あっこやな」ぼくはそういって、自転車通学者用の駐輪場を指差します。

「あかんやんあかんやん。あの場所は申請許可された自転車しか止めたらあかんねん」

 

常識人のきゃぷてんは真顔でぼくに注意をします。

「そうなん?まあ1日くらいええやろ、減るもんじゃあるまいし」

終始、お気楽気分のぼくにきゃぷてんたちは呆れ果てています。

「というかさ、自転車でどうやって帰るん?」

「来た道を帰るねん」

「めっちゃしんどいやん」

「せやな。行きは下りやったけど、帰りは登り坂ばっかりや…」

常識人のきゃぷてんは、ここで常識外れの提案をします。

「電車で帰ろうや」

「いや、帰りたいけど自転車はいつか持って帰らないと」とぼくは否定します。

「いっしょや、自転車も」ときゃぷてんは真顔です。

「は?」

「自転車を電車に乗っけたらええねん」

「そんなんできるん?」

「知らんよ。だから試すねん」と言うきゃぷてんの発言に、ボブは「まあ、乗っけれたらラッキーやな」と付け加えます。

「乗っけれたらラッキー?その通りや!」

きゃぷてんの突発的で無茶な提案を、ぼくは名案と勘違いします。

クールなヤンキーキャラの織田は終始「こいつら相変わらずバカだぜ」という不満げな顔をしていました。

そして、徒歩の3人とママチャリのぼくは駅に向かいました。

戦国時代で例えるならば騎馬1騎と足軽3兵です。

自転車を電車に乗っけていいのかどうかの確認を駅員さんにすることはしません。

いかにバレずにどう乗っけるか?ということが問題でした。

ここで発案者のきゃぷてんが問題を提起しました。

「関門は3つあると思うねん。

ひとつ、改札を抜けるところ。ふたつ、電車を待機する時間。みっつ、乗り込む瞬間」

ボブは言います。

「ママチャリ乗っける奴と同類と思われたくないから俺らはちょっと離れたとこでみとくわ」

きゃぷてんは「そやな。じゃあとっしーは適当に頑張ってくれ」とエールを送ります。

「ひとつひとつが緊張の一瞬やな、楽しみやわ!」

ぼくはワクワクが止まりませんでした。

 

どでかいママチャリを電車に乗っける、というイベントが楽しみになってきました。

これこそが”俺たちバグジー親衛隊”の道楽マインドです。何もかもがネタなのです。

「さあ行くか」大して作戦も立てないまま、第一関門の改札へたどり着きます。

幸運なことに、この時間駅員は無人でした。

 

「よっしゃーラッキーチャンス!」

ぼくは車椅子用の大きな改札を通り、自転車を駅のホームに押し込みました。

ザワワザワワ…

ぼくが自転車をホームに持ち込んだ時、駅がざわつきます。

部活終わりの学生たちが一斉にぼくを見ているのです。

うちの高校を含めて3校の生徒が利用するこの駅は、部活終わりの時間はいつも混雑しています。

そこに、ママチャリを押してきた男がいるのです。迷惑極まりない。

「なんやあいつ…」

「なんなの?」

いろんな声がありますが、ぼくには馬耳東風でした。気にせず、自転車とともに前方の車両側に移動します。

自転車を乗っけるのだから、後方の車両に行けばいいものを「いつも前方の車両に乗ってる」という理由で今日も前方に向かうのです。安定の単細胞。

自転車を押しながらホームを歩きながら、「案外いけるもんやな」という安堵を感じていました。

慣れというものは恐ろしいものです。

自転車が駅の中に入った当初はざわついていた駅の大衆たちもほどなくするとそのざわつきも収まりました。

“ママチャリ”の存在が駅の構内に溶け込んだ瞬間です。

きゃぷてんたちはそれを見計らってぼくのそばにやってきました。

「おう、とっしー。なんか順調やな」

「まあな、イケイケやで」

「いけてはないけどな、周りはドン引きや」

「まあ乗っけてもたら勝ちや」

そうこうしているうちに、電車が来ました。

ぼくは特に意識せず、ごくごく普通に自転車に乗っけました。

ボブたちが自転車を邪魔そうにしている以外は、いつも通りの帰路です。

小さな折り畳み自転車ならよかったのですが、ダイナマイトボディのママチャリは体積が大きいのです。

自転車を人の少ない端っこに置いても、電車の中の人から注目を集めてしまいます。

早く電車出発しろと思った瞬間、ついにバレちゃったのです。

目を点にした乗務員が運転席から飛び出してきたのです。

「き、きみ。何乗せてるの?」

ママチャリを電車に乗せたぼくの存在、バグ、に乗務員は語りかけます。

「えっと…自転車です」

「え、それはみればわかるけど、なんでそんなん乗せるの?」

「家に帰るために…乗せたかったんすよ」

「ふーむ」

「俺とママチャリは一心同体なんです。一緒にいたいんです!」

「そういわれてもねえ」

「だめっすか」

「えっとねぇ」心優しい乗務員さんは困惑の色を浮かべます。

その時、後ろの車両からも別の乗務員が走ってきました。これでぼくたちは前後を駅員に挟まれました。

乗務員同士は意見をぶつけあっています。

きゃぷてんたちは終始無言で俯きながら笑いをこらえています。

しかしぼくと知り合いであることをバレたくなさそうな顔をしていました。

「ママチャリを電車に乗っけていいのか?」

「あかんって!」

「誰かに聞く?」

「けどはよいかなダイヤ遅れるって…」

「ダイヤ遅れたら駅長に叱られるなあ」

「それだるいな、よし」

乗務員は話し合いの末、ぼくに告げます。

「だめ、乗せれないよ」

「そこをなんとかっ!」

「いやー、でもねー」

「もう一声っ!」

チョケるぼくに駅員は声を荒げました。

「いいから自転車乗せないで!」

 

「はい、さーせん」と言って真顔になり、ママチャリを電車から降ろすぼく。このあたりは真面目なのです。

そしてボブは告げました。「じゃあな、西桜ヶ丘駅で待っとくから。はよきてな」

そうして、電車組の3人は”電車”に乗って帰りました。

「あいつらは電車に乗れていいなあ」と、1人残されたぼくは、殆ど登り坂の道を1時間半かけてママチャリを押して帰りました。

いつもの集合場所、西桜ヶ丘駅前のスーパーには、ボブときゃぷてんがいました。

織田は帰ったようです。

「遅いぞ?」ボブはぼくに言います。

「遅いも何も下町から山奥のこの西桜ヶ丘まで来るの、めっちゃ疲れるんや」

「まあ、もう時間も遅いし、はよバグジー行こう」

そして、ぼくらはバグジーへ向かいました。

バグジーに着いた頃には、時刻は夜の8時を回っていました。

ぼくらは今日の出来事を振り返っています。

「まさかママチャリで学校来るとかさ、とっしー、お前アホすぎやろ?」

「行きは楽しかったし、刺激的でたまにはええもんやぞ?

電車にチャリ乗っけれたら全てが最高やってんけどなあ!」

ぼくはケラケラと笑っています。

小学校からぼくと同じ学校だったボブは言いました。

「まあ、とっしーは行動こそアホやけど勉強はできるからな。アホなキャラを作ってるだけや。今日の模試も一番成績いいかもしれんしな」

後日、返却されたこの日の模試の結果でとあることが判明しました。

ぼくの英語の点数に 6 と表記されていたのです。

ちなみにこの模試は、200点満点です。

 

【貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!】

疲れた金曜の夜に、ふっと笑えるコメディを。

「バカげている事ってめちゃめちゃ楽しいですよ!人生って結構面白いですよ!」

当ブログ「俺たちバグジー親衛隊」は、私自身の実体験を元にした小説を投稿しています。

大人になると、腹を抱えて笑ったり、ワクワクしたり、冒険することがめっきり減ってしまったりしませんか?そんなあなたに、いや、私自身に届ける物語が、「俺たちバグジー親衛隊」です。

今こそ”おバカな青春”を思い出そう!!そう思い、私は”俺バグ”を再び書き始めることにしました。

「学歴、年収、結果、出世、結婚…」 常識や世間体、既定路線の資本主義競争、そんな結果を忘れて、ただ、今この瞬間を楽しむ。それが俺たちバグジー親衛隊に登場する人物たちです。

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