初のバグり島への来訪日。
門限を破ったぼくは、母からこっぴどく叱られました。
しかし、もうボブときゃぷてんから高校デビューへの決意について背中を押されたこともあり、門限を撤廃することに成功したのです。
今後は「常識の範囲内の時間」に帰宅することになりました。
それからのぼくは少し変わりました。
門限や親の言うことをいの一番に聞いていた生活から、アグレッシブな挑戦心が芽生えてきたのです。
その後、ぼくらは部活が終わってから、バグり島で夕暮れまでたむろするという生活を続けました。特に何をするわけでもなく、ただみんなで集まってあーだこーだ話すことが楽しかったのです。
そんなある日のことです。
この日は、ぼく、きゃぷてん、ボブの3人に加え、織田もいました。
元野球部でしたが、ボウズがいやで一緒にテニス部に入った織田です。
「さて、今日はどうしよか」とボブが尋ねると、「とりあえず、コープでたむろしてからバグリ島やな」ときゃぷてんが答えます。
聞いたことのない地名に驚く織田は、「バグリ島ってどこやねん!」と少しキレ気味で聞いてきます。テニス部に入ってからも真面目に練習をしてメキメキ上達していた織田ですが、本人はヤンキーキャラを崩したくないようです。
「バグり島は島や。海パンがいるから準備しといてな?」
「は?海パンなんてないに決まってるやろが!」と織田は眉間にしわを寄せました。
「え?ないん?あっちゃー」とボブはニヤニヤと笑いました。
*
バグリ島へ向かう途中には、ぼくとボブの母校である小学校を通ります。ここは、つい先日「ハヨカエレ」と叫んできた酔っ払いおじさんと出会った場所です。
「今日は部活が早く終わって時間があるから、とりあえず小学校に入ろうか」そういって、ボブは正門から学校内に入りました。ぼくと織田もそのままボブに続きます。
ランドセルを背負っているわけでもなく、学ランを着た高校生たちがどかどかと放課後の小学校に侵入、いえ、正式入場していきます。
ここで常識人のきゃぷてんが「ちょ、待てよ!勝手に入ってええん?」と、ぼくらに尋ねました。
きゃぷてんが常識人というよりも、他の3人の常識がないだけかもしれません。常識に関する平均値が低すぎて、きゃぷてんがグググッと浮いてくるのです。
このあたりのまっとうな感覚が、きゃぷてんがきゃぷてんたる理由です。
「大丈夫や!門に”校庭開放中”って書いてるやん。なんせ俺らはこの学校のOBやからなあ」とボブが言うと、「せやせや」とぼくも追随しました。
「まあOBなら問題ないか」ときゃぷてんも納得しました。
学ラン姿の4人の高校生たちは、我が物顔で小学校に入ります。小学生の頃は、夢の国のような希望に満ちた校庭も高校生になって見返すと小さく見えました。
ジャンプ台、巨大遊具、雲梯、ジャングルジム、かつて熱狂した歴戦の遊具たちも今は寂れて見えます。
ぼくらも大人になったということかもしれません。
もう子供ではないのですから。
*
校庭をうろちょろと歩いている時、1人のおばさんがぼくらに話しかけました。
「君たち、いったいここで何をしてるの?」
不意を打たれた質問に対してぼくはたどたどしく答えます。
「えっと、この学校のOBなんで遊びに来ました」
厳密にはOBは二人だけでもう二人はただの部外者です。
おばさんは怪訝な顔をしながらも「そうなの?まあ楽しんでね」と言い、校庭の端の方に向かって歩いていきました。
なんとかおばさんの尋問を耐えたぼくらは胸をなでおろします。
「なあ、あれ誰や?」
「先生、ではないよな」
「ボランティアのおばちゃんとちゃうか?
放課後に開放された校庭を監視する役目や。怪しい人物が出てきたら即座に通報するんやろうな」
「めっちゃ怖いやん。ワンピースで出てきたインペルダウン看守、マゼランみたいやな」

©ONE PIECE / 尾田栄一郎 / 集英社
「まあ、気にすることはない。よくみたら普通のおばさんやから」
ぼくらはそのおばさんのことを看守・マゼランと命名し、通報されないように気を付けることを誓いました。
マゼランと会話後、ぼくらは学校の敷地内を隈なく歩き回ります。どこかに楽しそうな遊び場がないかを探したのです。
すると、とある場所にたどり着きます。
池、です。
大きさとしては畳4畳分くらいでしょうか。岩に囲まれた池の中では、数匹の大きな錦鯉と稚魚たちが、所狭しと泳ぎまわっていました。
ここでボブが、なにかを思い出したように言いました。
「そういえば、とっしー。小学生の頃にさ。この池で鯉を捕まえようとして池に落っこちたよな?!」
「そんなこともあったな…って、あの時はお前が後ろから押したんやろ!」
「だって押すなって言ってたからなあ」
「押すなって言ってたら押すなよ!!」
「いや、押してまうやろ。人間だもの」
ぼくとボブが口論を繰り広げていると、織田がぼそりと言いました。
「こいつら、捕まえるか。食ったらうまそうやし…」
ん?ぼくらは耳を疑いました。しかし織田は本気です。学ランを脱ぎ捨て、カッターシャツの腕をまくって準備をしています。
「いくぞ、お前ら!」親分肌の織田の声をきいたぼくらも、「せやな、捕まえるか!」と答えました。
池を高校生4人が囲い、鯉の捕獲に挑みます。
鯉を捕獲してよいのか、悪いのか。そんなことにはぼくらにはどうでもよかった。
ただ目の前に鯉がいるなら、捕まえたいと思ってしまうのが人間のサガです。
ここできゃぷてんは、織田に尋ねました。
「なあ、織田ってなんで鯉を捕まえたくなったんや?」
「は?理由なんているか?目の前に鯉がおったら捕まえてみたいやろうが!」と織田は答えます。
ボブは二人の間に入って諭すように言いました。
「きゃぷてん、野暮なこと聞くなよ。織田はな、そういうお年頃なんよ。鯉を捕まえたくなる、な」
【貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!】
疲れた金曜の夜に、ふっと笑えるコメディを。
「バカげている事ってめちゃめちゃ楽しいですよ!人生って結構面白いですよ!」
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当ブログ「俺たちバグジー親衛隊」は、私自身の実体験を元にした小説を投稿しています。
大人になると、腹を抱えて笑ったり、ワクワクしたり、冒険することがめっきり減ってしまったりしませんか?そんなあなたに、いや、私自身に届ける物語が、「俺たちバグジー親衛隊」です。
今こそ”おバカな青春”を思い出そう!!そう思い、私は”俺バグ”を再び書き始めることにしました。
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