とある町に、「い、家に帰らしてくれぇー!もう時間は9時や!俺んちの門限は6時なんやあー」と叫びながらジタバタと荒れ狂う少年がいました。
少年の隣ではふたり悪代官が「アホか!15歳の高校生の門限が6時って早すぎるやろ!」「もっと自分の殻を破っていけ!」と少年を悪い道に引っ張っていこうとします。
「うお~~でもよぉ~~」
少年はそう言って、歩道橋のど真ん中で膝から崩れ落ちました。
月明かりが照らす闇夜のことです。
悪代官のような顏をしたボブときゃぷてんは、少年のようなあどけなさの残るぼくの肩を叩きます。
「なあ、とっしー。こんなところで倒れ込むなよ」
「高校デビュー目指してるやつが門限7時でやっていけるはずないやろ!?さあ、とりあえず歩くんや」
「うぐぐぐ…」と言いながら、ぼくはとぼとぼと歩き歩道橋から降りました。
「なあ、とっしー。もう高校生やねんから親に反抗していけよ?」
「でももう門限をだいぶ過ぎてるから早く帰らないとあかんのや」
「ガリガリくんを買って持ち帰り、おかんから60円もらう。
そして門限6時を厳守する。そんなんでええんか!?」
「でもよ。俺は今までそうしてきたからなあ…」
「今までがどうした!?」ボブは一喝します。
「そういうところやで」ときゃぷてんも加えます。
「どういうところよ?」
「高校デビューしたいって言ってるのに、結局はまだ親の保護下から全く抜け出てない。
高校生ならもっと門限が遅くてもええはずや!」
「いや、でもよ…」
中学生時代は学年でもトップクラスの成績を誇り、まじめな優等生だったぼくは門限を破ったことがありませんでした。
「でももへったくれもないぞ!
新しい世界に飛び出さんと、高校デビューはできひんぞ!?」
「新しい世界…?」
その言葉が妙に頭に残ります。
「そうや、新しい世界や。高校デビュー、かっこいい髪型、そしてその先に、可愛い彼女」
「おお…」
脳裏には鮮明に高校テデビュー成功後の世界が広がっていました。
「輝かしい高校デビューをとるか、それとも今まで通り親の言いなりで6時門限の生活を続けるか。決めるのはお前や…」
これはまさに冒険でした。
勇者が旅立ちを決めるあの日のように、ぼくはそっと拳を握りしめました。
「俺は、世界を変えるぞ。門限6時は早すぎる。そんな門限は、関係ない!」
待ってました、と言わんばかりにボブは 「よし、じゃあとっしーの決意表明祝いとして、今からバグり島に行くか!」と言いました。
バ、バグり島?
ぼくはその地名に驚きます。ここは神戸市にある田舎町。内陸に島なんてありません。
「じゃあ、きゃぷてん、案内頼むわ」とボブはきゃぷてんに声をかけます。
きゃぷてんは一瞬眉をひそめたあと、「任せろ」と言いました。
*
先頭を歩くきゃぷてんは頭をポリポリとかきながらボブをちらちらと見ました。しかし、ボブは知らんふりをしています。
一方のぼくは、バグり島という場所に期待と不安に胸躍らせています。
そこは一体どんな場所なのか?船に乗るのか?何かとんでもない秘密があるのか?
しかし進方向はぼくの家からどんどん遠ざかるばかりです。
「おい!俺の家の方向と逆やん!しかも上り坂やから歩くのしんどいわ。もう帰りてえよー」
「帰りたきゃ帰れよ。いつまでも門限にビビったままか」
「バグり島はほんまに凄いぞ?あっこに来んとかどうかしてるわ」とボブときゃぷてんはぼくを煽ります。
ミジンコに負けないほどの単細胞生物のぼくは、そんな風に煽られることで、帰宅する意欲を無くしました。
「こうなりゃバグリ島がどんな場所か、この目でみないと帰れへんわ!」
時刻は夜9時を回ったところ、西桜が丘の夜はとても静かです。
ここでぼくは少しくだらない話を思い出しました。
「そういえばこんなことがあったんや。ある日俺らのクラスの男子が教室の入り口にたむろしてたんや。そしたら堀田という気の強い女子がドカドカと威厳のある歩き方で入り口にやってきたんや。
堀田からしたら入り口をふさいでる俺らが邪魔やったんやろな。
俺たちに向かって”ゲラウェイ!”って叫んだんや」
「ゲラウェイ?どういう意味や?」
「ドラクエの呪文みたいやな」
「”ゲラウェイ!”って言われた俺らも目が点なんや。意味がわからんからな。
だから俺たちは微動だにせんかった。
そしたら堀田は俺らに近づいてきて、
今度は、 “ゲット アウェイ !! ド ケ! タ チ サ レ!!!”と言い放った。
その威圧感のある言葉に俺たちは脱兎の如く逃げだしたよな
‘get away’。ってことか。高1であんな発音うまい奴おるとは思わんかったわ」
「当然、その女子のあだ名は、これから今後ゲラウェイになったんやろ?」
「ご名答」
「ゲラウェイはさ。発音が良すぎて英語の先生が下手に聞こえるんや。英語の時間にゲラウェイの発音聞いた時の英語の豊田先生の顔がまたおもろいんや!」
カッカッカッ、ケラケラケラッと笑いあいながら、3人はバグり島に向けて歩いていました。
その時、道路の横に石垣の上の方から、ぼくらにむかって叫ぶ声が聞こえました。
「ウェイ!!!」
ん!?!?ぼくらはびくっと体を震わせます。
ゲラウェイではないものの、何かしらの英語のような声が聞こえたのです。
歩みを止めて石垣の上を見ると、そこには月明かりに照らされた男性の姿がありました。
「ウェイ!!ハヨー…カエランカイ!」
【貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!】
疲れた金曜の夜に、ふっと笑えるコメディを。
「バカげている事ってめちゃめちゃ楽しいですよ!人生って結構面白いですよ!」
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当ブログ「俺たちバグジー親衛隊」は、私自身の実体験を元にした小説を投稿しています。
大人になると、腹を抱えて笑ったり、ワクワクしたり、冒険することがめっきり減ってしまったりしませんか?そんなあなたに、いや、私自身に届ける物語が、「俺たちバグジー親衛隊」です。
今こそ”おバカな青春”を思い出そう!!そう思い、私は”俺バグ”を再び書き始めることにしました。
「学歴、年収、結果、出世、結婚…」 常識や世間体、既定路線の資本主義競争、そんな結果を忘れて、ただ、今この瞬間を楽しむ。それが俺たちバグジー親衛隊に登場する人物たちです。
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