「とっしー、例の件は大丈夫やろうな?」
「ああ、もう事前に仕込んである。3000円も既にもらってる」
「よし、あとは俺たちに任せろ」
「バレんように頼むぞ」
*
橋田先生に「待っとかれる」という恐怖を味わった翌日。
学校が終わったぼくらは今日も西桜駅でたむろしていました。
「今日はとっしーの散髪の日や。楽しみやな」
「巷で流行りの角刈りやからな、これはかっこよくなるぞ」
ボブときゃぷてんはニヤニヤしながら言います。
「角刈りだりーな。アシュメにしてくれよ~アシュメにしてくれよ~」とぼくは訴えますが、ボブは一言。
「アシュメなんかにしたらカッコよくなってもておもんないやんけ!」と。
「うお~~い!おもろいかどうかで人の髪型を決めるなよ!!」とぼくはボブに怒りをぶつけます。
ここできゃぷてんが横から「おもろい方がモテる可能性もあるぞ?かっこいいからモテるってわけでもないからな」と言いました。
ぼくはここで「せやな~」と納得してしまったのです。
ボブときゃぷてんはしめしめと笑っていました。
「まあ、とりあえずヘアサロン茎坂にいこう。」
そう言いながら、ボブを先頭に散髪をする場所へ移動しました。
ヘアサロンってどこやろうと思いながらたどり着いた場所は、ぼくの家の前の公園でした。
「ここのどこがヘアサロンやねん!?俺の家の前やぞ!それはあかん、家の前はあかん!」
「まあ、落ち着けよ、とっしー!すぐにムキになるのはお前の悪い癖やぞ」
ボブはいつもそうやって、ぼくの感情をジェットコースターのように上下させてきました。
もちろんそんな彼は10数年後も性格は変わりません。それどころか話術に磨きをかけてバリバリの営業職です。
ボブはガサガサと自分のカバンから散髪用のハサミを取り出しました。
「なんでそんなんもってるねん!」と突っ込んだぼくですが、これ以上の抵抗は無駄と悟り、さっとそばのベンチに座りました。
まるで処刑をされるかのような面持ちで鎮座します。やるなら一思いに…
サンパツシテネの合図です。
「では…いざ尋常に」少し場違いなセリフをはきながら、ボブはハサミを構えました。
「さあ、こい!」と叫んだぼくは目を瞑ります。
ジョキジョキジョキ…
夕暮れの公園に鳴り響く祇園精舎の鐘の声。
いいえ、ハサミの髪切り音です。
今、ここに無免許美容師が誕生したのです。
額に手術痕のある神のようなメス裁きの無免許医はかっこいいですが、公園のベンチで散髪をしている高校一年生はかっこよくありません。
そしてもうひとり主役がいました。
「前髪が重いぞ!もっとふわっとせえや!」ベンチに座るぼくの真正面で指示を出すきゃぷてんです。
「わかった!」ボブはきゃぷてんの指示を受けながらカットを続けます。
「左サイドが厚くなってるからそこを先に捌いといて!」
「おうよ!」
「右奥から子供が歩いてくるで!話しかけられても気にせず散髪続行で!」
「あいよ!」
普段はおとなしいきゃぷてんが的確な指示を出しています。
ここでぼくは、きゃぷてんが中学時代にバスケットボール部だったことを思い出しました。
公園の状況を瞬時に判断するための広い視野。
散髪関連者のボブとぼくをまとめるリーダーシップ。
散髪の流れを見極める冷静さ。
これがコート上の監督、きゃぷてんはポイントガードの役目をこの散髪で果たしているのです。
きゃぷてんの指示を受けるボブは真顔でした。
ぼくの散髪をどこか娯楽に考えていたヘラヘラ感はありません。
ハサミを持てば人が変わる。これが生粋の職人なのか、それともきゃぷてんのリーダーシップか。
しかし、ぼくは焦っていました。時間がかかるほどリスクが大きくなるからです。
なにせ散髪をしている場所は家の前の公園です。
母が買い物から帰ってきたり、父が仕事から帰ってきたときにこの様子を見られればどんなことになるでしょうか。
そんな焦りが、ぼくの首を動かします。
「ボブ、もっと急いでくれ!」
そう叫んだ時に首をねじってしまったのです。
ザクッ…
ボブの持つ鋭利な刃先がぼくの頭皮を突き刺しました。
「いいいっでぇ~~~!!!」
【貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!】
疲れた金曜の夜に、ふっと笑えるコメディを。
「バカげている事ってめちゃめちゃ楽しいですよ!人生って結構面白いですよ!」
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当ブログ「俺たちバグジー親衛隊」は、私自身の実体験を元にした小説を投稿しています。
大人になると、腹を抱えて笑ったり、ワクワクしたり、冒険することがめっきり減ってしまったりしませんか?そんなあなたに、いや、私自身に届ける物語が、「俺たちバグジー親衛隊」です。
今こそ”おバカな青春”を思い出そう!!そう思い、私は”俺バグ”を再び書き始めることにしました。
「学歴、年収、結果、出世、結婚…」 常識や世間体、既定路線の資本主義競争、そんな結果を忘れて、ただ、今この瞬間を楽しむ。それが俺たちバグジー親衛隊に登場する人物たちです。
おバカなことでも全力で生きているとなぜか楽しくなる。そんな魂を届けます。
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