1話 マチカド調査隊、推参 / 俺たちバグジー親衛隊 Ⅰ章

「お、おい…ほんまにするんか?」

「あたりまえや」

 

「いっしょについて来てくれよ…ひとりじゃ不満なんやってぇ…」

ぼくはプルプルと震えながら懇願しました。

 

「そう弱弱しい声を出すなって」

 

「でもよ。緊張するんや。そんなとんでもないこと、俺にできるか不安でよ…」

道行く人々が足早に帰路につく夕暮れの西桜駅の前でもじもじとしながらキョロキョロとしている男子高校生、1匹。

 

「これはな、とっしー?お前の人生、いや、世界を変える重大な任務なんやぞ?」

 

「世界を…変える?」

 

「そうや。世界を変える気持ちがあるか。それだけや」

 

「セカイ、か…」

そう呟くと、無性に勇気が湧いてきました。15歳の少年には、世界を変えるなんて言葉は世界三大珍味よりも美味なのです。

 

「きゃぷてんからも背中を押したってくれよ」

ボブはそう言ってきゃぷてんの肩を叩きました。

きゃぷてんはポリポリと頭を掻きながら、ぼくに言います。

 

「俺は絶対に、とっしーが今からやろうとしてることはせえへん。

そんなことしたらヤバい奴やからな。だから俺は今からお前とは他人になる。知らんふりをする。でも、絶対やってくれよ。そこの陰から見届けるから」

 

「ああ、やっぱり嫌やぞぉ!!やっぱりキモいやんけ~。他人のフリすんなよ~」

 

「あー、もう、ええからいけって!」

「せや、はよ終わらせたら、かっこよくなる時も近づくんや!」

 

「わかったよ!じゃあ、もういくぞ!!

うぉおおおおお!!!」

 

ぼくはそう叫ぶと、脱兎の如く、足を動かしました。

そして、すぐそばを歩いている主婦に声をかけました。

 

「さ、さーせん!さーせん!」

 

「え??」

 

元気な長ネギが飛び出たカバンを持つ主婦は鳩が豆鉄砲を食ったように目をくりくりとさせています。

 

「ぼく、今から散髪するんスよ!」

 

「は、はあ…」

主婦はそれがどうしたと言うような顔で返答しました。

 

「ズバリ、どんな髪型が似合いますかね?!」

 

学ラン姿の高校生からの唐突な質問に主婦は唖然としていました。

しかしここで、主婦はぼくの顔をじっくりと見つめたのです。

「うーん…あなたの顔つきなら…角刈りとかどうかしら?」

 

「角刈りっスか!?」

 

「うん、角刈りよ。男らしいわ」

対応力が良すぎるうえに、男らしい髪型まで教えてくれる主婦。一体、この方は何者なのでしょうか。

 

「はい、アザッス!ご回答アザッス!!」

ぼくはそう言って、踵を返すなりボブときゃぷてんが隠れているベンチを隅に走っていきました。

 

 

これはあまりにしょうもない実験でした。

ぼくは何をしているのかというと、話は1時間遡ります。

 

夢見台高校に入学してから間もないころ。

ボブは中学時代のダサさを引きずるぼくに言いました。

「とっしー、お前さ。もっとカッコよくなろうぜ?そんな芋芋としたちんちくりんでは、高校生活を過ごしていかれんぞ!今すぐにまずは美容室にいこう!」

 

ボブというあだ名からは、ボブ・サップのようなゴリゴリ鳩胸の青年を予想するでしょう。

ですが彼は、柔和な笑顔が素敵な、ふつうの青年です。

少しばかり毒舌で素直さがないので、人からもらったお菓子も「こんなまずいのよう食わすな。もう一個くれ」と言ってしまいます。

 

ボブは、みなさんの周りにも一人はいるであろう悪の参謀キャラでありまして。事件の裏には彼が暗躍しておりますが、決して表には出てきません。

叱られるのはぼくのような操られやすいミジンコ少年なのです。

 

「ボブ、お前の意見はごもっともやけど、焦りすぎやぞ。まずは、とっしーにどんな髪型が似合うか、そこをリサーチしないとな」

 

そう言ったのはきゃぷてんです。

彼は23時間睡眠という偉業を何度も達成している眠りの神。容姿端麗なイケメンでバスケットボール、サッカー、空手とあらゆるスポーツを卒なくこなします。

ただし、どのスポーツも決して突出はせず、「全てフツーなフツーな奴。夢見台高校の基準点」と呼ばれることになります。

 

ボブときゃぷてんの2人がミジンコなみの単細胞生物であるぼくに様々な入れ知恵をするわけです。

 

 「とりあえず散髪やな!俺らに任せろ!」

ボブは自信満々な顔でそう言いました。

 

「任せろって、理容師免許持ってるんか?」

 

「そんなもんいらんよ。お前、小学校の時に、俺の図工の授業見てたやろ?ハサミを使わせたら右に出るもんはおらんのや」

 

「図工っていつの時代や…」

ぼくとボブは同じ小学校出身でした。中学校が別で、高校でまたいっしょの学校に入学したのです。

 

「まあええから公園でも行くか。公園で切ったるわ!」

 

なんで公園やねん!というベタなツッコミを入れると思いきや、ぼくはここで思わぬ素直さをみせます。

「たしかに俺の髪はダサいな。よし、ボブ、切ってくれ!!」

 

図工が得意な無免許理容師の友人に髪を切ってもらう、そんな謎イベントを受け入れることにしたのです。

 

するとボブは、ぼくの前に手を出します。

「ほな、1000円な」

 

「ふぇ!金とるん?」

 

「もちろん、俺らもプロや!」

 

「どこがプロやねん!?」

 

 

「そうと決まれば、とりあえず髪型を決めないとな。とっしーの今の髪型は、林の中に生えたキノコや。もっさりしてるその髪をどうにかせなあかん」

 

「そういうても何が似合うかわからへんからなあ」

 

するときゃぷてんが「町の人に似合う髪型聞いてみよ!」と言いました。

 

「は?」とぼくは驚きましたが、ボブは「それや」とニヤつきます。

 

「マチカドで調査するんや!ほんで、調査結果の中で、一番回答が多かった髪型にしよう!」

 

うそやろ、無茶な理論やと思いつつも、「おもしろそーやな!やってみよ?」とぼくは答えました。

このあたりのフットワークの軽さこそ、ぼくが単細胞生物と言われるゆえんでした。

 

そして冒頭の主婦へのインタビューにつながります。

 

 

ダッダッダと小走りで彼らの元に戻ったぼくは、早口で畳みかけました。

「おい!主婦に聞いたんやけどさ。角刈りとか言うてるんよ!角刈りってダサくないか!?ほんまにそれでええんか!?」

 

「まあ、その人が言うなら角刈りがかっこええんやろう」

 

「もしかすると10年後くらいに角刈りブームが来るかもしれへんしな」

 

「そ、そうか。じゃあもっと、他の人にも聞いて別の髪型を聞き出すわ!このままじゃあ角刈りになってまうからな!」

ぼくはそう言って、再び人通りの多い駅前に走っていきました。

 

ボブときゃぷてんは、ニヤニヤしながらその様子をみつめています。

 

しかし、ぼくはこの町をみくびっていました。駅前と言っても道行く人はほとんどが主婦もしくはご年配者です。

 

本当は若い女子高生に声をかけたい気持ちがあったのですが、今のぼくにはその勇気がありませんでした。

優しく受け答えをしてくれそうな方を探します。

 

そして白羽の矢を立てたのは、70歳くらいのおばあさんでした。

 

「さーせん!さーせん!!」

 

「はへえ?」

 

「今から髪を切るんですけどね?ぼくって、どんな髪型が似合いますかね?」

 

おばあちゃんは、蚊が止まるような速度で首を左右にひねり、ぼくを舐め回すように凝視しました。

 

「あんたが髪を切ったときに、似合う髪型かえ~…?」

 

「ええ、何が似合いますか!?」

主婦でさえ、角刈りを推奨するのですから、ご年配のおばあちゃんなら角刈りを勧めてくるに決まっています。仕方がない、俺はもう角刈りなんだ、と覚悟を決めました。

 

おばあちゃんは、ぐっと息を吸い込んで渾身の声を振り絞ってくれました。

 

「…….ボウズ!」

 

 

第2話 角刈りデビュー5秒前 / 俺たちバグジー親衛隊 Ⅰ章

 

 

【貴重な時間を使って読んでいただき、誠にありがとうございました!】

疲れた金曜の夜に、ふっと笑えるコメディを。

「バカげている事ってめちゃめちゃ楽しいですよ!人生って結構面白いですよ!」

当ブログ「俺たちバグジー親衛隊」は、私自身の実体験を元にした小説を投稿しています。

大人になると、腹を抱えて笑ったり、ワクワクしたり、冒険することがめっきり減ってしまったりしませんか?そんなあなたに、いや、私自身に届ける物語が、「俺たちバグジー親衛隊」です。

今こそ”おバカな青春”を思い出そう!!そう思い、私は”俺バグ”を再び書き始めることにしました。

 

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